最低小説
「尿道★ワンコロ」 第2回・ツボ姉さん登場の巻まっかな朝。
スコップを手に、二時間かけ村長のウンコ掃除を終えた私は、
雑穀、鹿の生肉などをバケツに入れてハシゴを登りました。
巨大な村長は微動だにしません。
死んでいるのか、生きているか分かりません。

口の中にはケモノをおびき寄せるエサ以外に、いのししやムササビの遺骸などがあり、どれも腐食して凄まじい臭気を放っていました。
「おはようございます」
と、声をかけてみるも返答なし。
どうみても死んでいるのに、あの常軌を逸した排泄量はなんだろうか。
あまり深く考えないほうが良さそうです。
それよりも、空腹でめまいがします。
村長の糞尿にまみれた食事など摂れるはずもなく……。
「ねえ、新入りさん」
その声の主を確認すると、私は思わずハシゴから落ちそうになりました。
察するに、女性のようですが、全身に包帯を巻きつけたその姿は
ミイラそのものでした。
「やったあ。同じくらいの歳だ」彼女は目だけで笑いました。
私たちは森林を並んで歩きました。
腐った鳥、腐った雑草。不可解なノイズ音がこだまする暗黒の道。
彼女はメド子さんといい、私より年がふたつ上でした。
相当おしゃべりだけど、暖かい人柄で、人見知りの私でもすぐ打ち解けることができました。
「びっくりしたでしょ。村長」
「はい」
「そっかあ。おしっこだったかあ。ラッキーだったね。
あたし、物心ついたころからこの村にいたけど、初潮を迎えたあたりかな、
村長のもとで働くことになって……初日はビックリしたな。お尻が、こう、
こっちに向いててね。挨拶したと同時にウンコをボトボト落とすんだもん」
私は急に安心したのか、涙が溢れてきました。
朝一番の糞便撤去作業。異常な光景。他の老婆メイドたちは少しも表情を崩さず、
のんびり昆布茶なんかをすすっていました。
メド子さんの暖かい励ましに、嗚咽は止まりませんでした。
彼女には子供がいて、メイドの収入だけでは食べていけず、村はずれの小屋で
ピンサロ店を経営しているそうです。
「色々なチンチンがやって来るからね。油断ならないよ。黒いヤツ、曲がったヤツ、
油っこいやつ、バーベキュー・テイストなやつ。けど負けないよ。あたし。
自分の舌の技術に自信あるから」
「メド子さんって凄いんですね。私もひとつくらい、そういう技術が欲しいです」
「ウチで働く?」
私は首を横に振りました。とりあえず村長の糞尿に慣れるまで、油っこいものや
バーベキュー・テイストのものに触れたくないのです。
メド子さんは秘密の沼地に案内してくれました。
沼を囲う葉のざわめき、心地よい緑風。汚物にまみれた心が洗われました。
メド子さんは辛いことや悲しいことがあると、ここに来るという。

「ワンコロ、あんたイイヤツだ。本当の親友になれそう。だから頼みがあるの」
メド子さんは向き直り、声のトーンを落としました。
そして、身体じゅうの包帯を。
ゆっくりと、外しました。
萎縮した私は、それでも、なるべく彼女が傷つかないような表情を作りました。
一糸まとわぬ彼女の姿態はハイレベルなグロ。裂傷、火傷、打ち身、
青アザが、身体中にありました。
顔は無数のくぼみができていて、まるでゴルフボールのようです。
私は彼女から目をそらさず、平静を装いました。
「いや、これは健康対策なんだけどね。自分でやったの」
「え?」
メド子さんはあっけらかんと言いました。
「そう。針灸ってあるでしょ。ツボ押すやつ。数年前アレにはまっちゃってさ、
最初は指圧棒とか、つまようじを使ってたんだけど、だんだん刺激が足りなく
なってきてね。次第にバットとか木刀で自分を殴るようになっちゃって。
気持ちいいんだコレが。時間かからなかったよね。アイスピックになるまで」
「アイス、ばかなこと、やめてくださいよ! 死んじゃいますよ!」
「いや、死なないよ。あたし、チンチンしゃぶるだけが能じゃないんだから。
ツボ押しで『死なない技術』も持ってるんだから。
実際、ツボ押しをはじめてから健康だもん。病院に行く回数が増えただけで」
あたしのか細い抗議に耳を貸さず、彼女はリュックからガスバーナーを
取り出しました。
「まだ試してないんだけど、やってくれる? 友情の証明に」
「い、いやです」
「三陰交からやって。足内側のくるぶしから指3本上の場所」
「いやです」
メド子さんは息を荒げ、ガスバーナーを手にジリジリ歩み寄ってきました。
唇の端から泡を吹き、白目を剥いて、がなりたててきました。
「ひさしぶりにやってもらいたいのしかもバーナーなんて強烈でしょうね!
じゃあ手からでいいから親指のつけ根、ここ合谷、ごうこくっていうんだけど
便秘と冷えに効くの、ちょっと炙ってちょうだい炙って頼む頼みます、
ワンコロさんお金も少しあげるからやってちょうだいよ炙って!」
私が頑なに拒むと、彼女はサボデーネ、という不可解な言葉を発し、

自分で自分の「ツボ」を炙りはじめました。
「あぢっ、あぢぢぢぢぢぢぢ、効くわコレ思いのほか効きますわ」
激しくのけぞり、苦悶や恍惚を顔に浮かべ、彼女は身体のあちこちに強烈な刺激を与え続けました。
健康のために。
私が逃げるより早く、「ゴルベーザ」と叫び、彼女は失禁しつつ昏倒しました。
救助を呼ぶことになったのですが……。
次回に続く